家族、それぞれの暮らしのカタチ Vol.2  〜座間アキーバさんご一家〜

2021.2.18
家族、それぞれの暮らしのカタチ Vol.2  〜座間アキーバさんご一家〜

ブルーボトルコーヒーの店内装飾や、長崎ハウステンボスで開催される世界フラワーショーでのインスタレーションをはじめ、ウエディング、ワークショップなど、幅広いフィールドで「華」を彩るフラワーアーティスト・座間アキーバさん。
その活躍の傍らには、NYでアートディーラーとしてのキャリアをスタートさせた妻のエイミーさんの存在が欠かせない。
人生も、仕事も、自己表現でも、大切なパートナーとして歩んでいるお二人にお話を伺った。

自分の人生を捧げられる「花」との出会い

フラワーアーティストとして11年目を迎えたアキーバさん。
かつてはモデルとして活躍をされて、アディダスやルイ・ヴィトンなどの広告にも起用されたことがある。ただ心のどこかで充実感を得ることはできなかったという。もっと人生をかけて熱中できるものはないだろうか。
自分を表現するものは何だろう。そんな感情を抱えて悩む時期もあった。
「モデルも辞めて、実家があるアメリカに帰ろうと思って。
そんな時に当時入っていた社会人サッカーチームのメンバーから、やってみたら、とすすめられたんです」
花との出会いは、「ご縁」だったというアキーバさん。これまで花の経験はなかったが、実際にやってみた瞬間に、「これだ」と感じたという。

「これは自分に向いている、という直感がありました。
それに花を通じてショップやイベントの装飾だったり、ブライダルだったり、ワークショップだったり、色々なフィールドに広がっていける可能性も魅力でした」
それまではモデルとして与えられた役割を全うするのが仕事だった。
しかしフローリストとしては、自分から仕事や表現の場所をつくっていかなくてはいけない。
ある意味、ビジネスマインドも必要になってくる。でもアキーバさんは花もビジネスも全部独学だ。
「大学に行かなくても何とかなるって、ちゃんと学校でも教えて欲しいよね」とイタズラっぽく笑顔を見せる。

自分の手でつくったアトリエ&スタジオ

アキーバさん一家は、一軒家を改装したアトリエ&スタジオも運営している。
スタジオは自分の手で一から作ったというナチュラル感あふれる内装だ。
スタジオでは家族写真やポートレートをはじめ、作品撮りなどにも使われ、アトリエではイベント用の作品や依頼のあったアレンジメントづくりなどを行っている。作品づくりのコツを聞いてみると、「もちろんセオリーはありますけど、基本的には感覚や感性を大事にしています。
花材を寄せてひとつひとつのグループを作ってあげることで美しくレイアウトすることもできるし、逆にバラバラにしてもそれはそれで美しくなる」とのこと。母親が画家ということもあって、幼少期から絵も描いていたアキーバさんには、自然と美的感覚が育まれているのかもしれない。

見える景色を広げてくれるパートナー

2017年にはhanatombo(株式会社花とんぼ)を設立。
その当時からアキーバさんを支えていたのがパートナーのエイミーさんだ。
社名の由来も、「エイミーと名前を考えている頃に、コンサートを見に神宮球場に行ったんですけど、そのとき空一面にトンボが飛んでいて」というアキーバさん。
そんなアーティストらしい感覚派のアキーバさんを公私共に支えるエイミーさんは、もともとニューヨークMOMAの現代アートのみを専門にする米国最大のアート機関PS1でアートディーラーをしていたという経歴を持つ。

「当時は、作品を展示したいアーティスト、その作品を買いたいユーザー、その間に入って何でもやっていましたね」とエイミーさん。
ただ日本に帰ってきてからは、なかなか自分の仕事への理解が得にくかったようだ。
日本でアート関連の仕事といえば、極端に言えばアートをつくる側と、美術館やイベントなどアートを見せる側のどちらかがメイン。
その間をキュレーションする文化は、まだまだ日本には根づいていない。「だから、今はhanatomboで自分のやりたいことを頑張っている感じですね」

子どもという、かけがえのない花

2020年夏からは広尾の新施設「EAT PLAY WORKS!」内に、「手土産に花を」をテーマにした生花のワゴン「The Wagon」もオープン。
朝の市場から届くアキーバさんがセレクトした季節の花が、小さなワゴンに並ぶ。
「イメージは、ヨーロッパの街中なんかにふらっと現れる馬車みたいなワゴン。
季節の花が目一杯に詰められて、街全体が明るくなるというか。何でもない日常の暮らしの中に花があるライフスタイルもいいじゃないですか」とエイミーさん。

そんなお二人には、花のように“完璧に美しい”二人のお子さんがいる。
3歳と1歳の男の子だ。
アキーバさんもエイミーさんも、日本とアメリカの両方にルーツがあるのだが、子育てではどちらの言葉を使うのだろうか。

「家では基本英語で、幼稚園では日本語を使っています。
だから『これなにいろ?』って聞くと『あお』って答えて、『What color is this?』って聞くと『Blue』という風に、日本語で聞くと日本語で答えて、英語で聞くと英語で答えるんです。
だけど、難しいですよね、どっちの言葉でどう進んでいくかって」とエイミーさん。
男の子兄弟だけに喧嘩も多く、子育ては想像以上に大変なようだ。

アートファミリーが目指していく未来

フラワーアーティストとして活動するアキーバさんと、アートディレクターとしてその活動を支えるエイミーさん。
そのお二人の関係は、とても魅力的だ。
仕事が自己表現に近いところにあるアキーバさんにとって、その内面を理解してもらいながら、方向性のビジョンも照らしてくれるエイミーさんの存在はなくてはならないものだろう。
今後のアキーバさん一家は、のどかな町での暮らしも考えているようだ。
「もう少し広いスタジオも作りたいし、海の近くで子育てもしたくて。理想の生活とか、結局なんのために生きているんだって考えたときに、自分たちの好きな場所に行くのが大事かなと思っています」というアキーバさんは、新しい冒険を前にした少年のような表情で笑う。
ちなみに屋号に使われている「トンボ」は、前にしか進まず退かないことから、日本では「不退転」の精神を表すものとして、古くから武将たちに愛されてきた縁起物だ。「勝ち虫」と呼ばれたトンボの名前のもとで、アキーバさん一家の冒険も未来に向かって、まっすぐに前進していきそうだ。

プロフィール

akiva zama

座間アキーバ 東京生まれ、シアトル育ち。
2010年から講師として全国各地を巡りキャリアをスタート。
2014年・2015年・2017年・2019年、長崎ハウステンボス世界フラワーガーデンショーにて特別展示を披露。
2018年シンガポールで開催された世界ガーデンフェスティバルに日本代表として出場。
2017年株式会社「花とんぼ」設立。小淵沢アートヴィレッジや河口湖のhotel yl. and co. と連携し、アーティストならではのダイナミックなセンスを活かし、ウエディングのトータルプロデュースをスタート。
2020年、渋谷区広尾にあるeat play works!でフラワーショップ「the wagon by hanatombo」を開業。

Aimee Isobe

磯部エイミー 東京生まれ。13歳で単身渡米、2009年Sacred Hearts Academyハワイ校卒業。
2013年 American musical & Dramatic Academy にて映像演劇を学びBachelor of fine artsを取得。大学卒業後、ニューヨークMoMA ps1に就職。アシスタントを経て、アートディーラーとして2017年まで勤務。
2016年 NY大学The Leonard N.Stern SchoolにてGeneral MBA(経営学修士)を取得。
主に美術館運営のビジネスを学ぶ。
2017年花とんぼのアートディレクターに就任。
2019年、こどもにバイリンガルでアートを教える芸術集団、Little Artists Leagueのディレクターに就任。
花とんぼの芸術プロジェクトのキュレーションを担う。
ラジオ番組のMC(InterFM)やアートに関するコラムの執筆など個人の活動も行っている。

HP
https://www.hanatombo.com

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