耳を大事にしていれば、大人になっても音楽を楽しめる」。 国内外で活躍するジャズ・トランペッター・黒田卓也さんが、 子ども向けエンタメ鑑賞用イヤーマフを勧める理由とは?

2021.5.17
耳を大事にしていれば、大人になっても音楽を楽しめる」。 国内外で活躍するジャズ・トランペッター・黒田卓也さんが、 子ども向けエンタメ鑑賞用イヤーマフを勧める理由とは?

©Hiroyuki Seo

―黒田さんは、普段から、耳をケアしたり、聴力を意識したりするようなことはありますか?

「敏感な人と比べたら、あまり気にしていないほうだと思います。
ただ、実は耳がもともと悪くて、子どもの頃から通院していました。
左耳の鼓膜が倒れやすくて、耳抜きが必要になることが多いんです。
だから既に、聞こえていることに幸福を感じているというか(笑)。
ただ、最近アメリカでは、音量が大きいステージが多くなりました。
特にゴスペルの教会で演奏したり、ヒップホップのアクトと共演すると、普段のジャズのステージより何十倍も音が大きい。ひずみやグルーヴによって、お客さんと一体となるエンタテインメントを提供するので、音量ありきになる。そういう現場が増えて、ようやく耳栓を買いました」

――また、トランペットは、音量が調整できる電子楽器とは違って、基本は生音の楽器じゃないですか。そのあたりって、耳のケアに関わってきたりしますか?

「いえ、トランペットって、意外と自分には聴こえにくいんです。たとえば、サックスは耳の真下から音が出ていますよね。でも、トランペットは、自分の60cmくらい前から音が出ている。これ、みなさんは知らないところだと思います。だから、(ライブで、モニターに)『もっと音を返して』って言うと、いや聴こえてるだろって周りの人に思われがちですけど、実は聴こえていないんです。だから、自分の音で自分がうるさいと思うことは、ほとんどないです」

――それは演者さんしか知り得ない情報ですね!

「ビッグバンドでは、トランペットはいちばん後ろに座るんですよ。その前にいるトロンボーンやサックスの人は、みんな耳栓をしていますからね」

――なるほど! さきほど、子どもの頃から耳の調子が悪かったとおっしゃっていましたが、トランペットをはじめたのは12歳の頃ですよね。大変ではなかったですか?

「そこまでではなかったです。ただ、そこから悪化した可能性があるかと思うと、もっとケアしておけばよかったですね。子どもの頃の耳のケアは、絶対に大切だと思います。大人になっても、僕の親友のシンガーが、ツアー中にエンジニアのミスで、イヤーモニターに大きな音を返されてしまって、ライブをキャンセルして、3日間ホテルから出られなくなってしまった場面も見ていますから。致命傷になりえるんです、耳っていうのは」

――なるほど。黒田さんの立つステージには、子ども連れのお客さんもいらっしゃいますか?

「そうですね。フェス会場では、お子さんが吹奏楽をやっていて、親御さんがジャズファンで、みたいなお客さんも見かけます」

――ステージから、イヤーマフをつけているお子さんは見えますか?

「僕のステージの音量でイヤーマフをつけているお子さんは、少ないかもしれない。ただ、ニューヨークのゴスペルの教会だと、お子さんと一緒に来ているメンバーは、イヤーマフをつけさせていますね。正直、日本ではイヤーマフをつけることが、まだ共通認識として届いていないのかもしれないですね」

――では『Earmuffs for Entertainment』を手に取ってみた、率直な感想をうかがえますか?

「まず、軽いなと思いました。で、つけてみて、中音域の人の声は聞こえるようにしていて、耳に悪い、高い音域と低い音域をカットしていると感じました。だから子どもにも、お父さんやお母さんの声は聞こえるけれど、音楽で出ている耳に悪いところはカットして届くんだろうなって。あとは、長時間つけた時に蒸れたりしないのかな?というところは気になりました。こういう密閉感があるものって、子どもはつけること自体が慣れていないでしょうし」

――たしかに。これから、ライブやフェスに来る親子連れに、どんな楽しみ方をしてほしいですか?

「特にジャズは、お子さんにとっては、観に行くチャンスがないじゃないですか。お酒を楽しむ場所でやることが多いから、なかなか子ども連れでは行きにくいし。だから、野外とか、子どもを連れて行ける場所でやるライブは、とにかくいい思い出になってほしいんですよね。そういう時に、イヤーマフをつけて、耳を大事にしていれば、大人になっても音楽を楽しめるでしょうし。これがあれば、親御さんも、もともと好きだけど行き控えていたライブに、子連れで行きやすくなると思いますしね」

――耳を大事にしなければならないのはもちろん、ライブが、音楽を好きになるきっかけや、いい思い出になるのではなく、音が大きいことが怖かったっていう記憶ばかりになってしまったら、もったいないですもんね。

「そうですね。僕もそういうことを言っている子どもを実際に見たことがあります。ライブ中に、『うるさーい!』とか、耳をふさいで正直に言われてしまうと、こちらも胸が痛くなる。そういう時にイヤーマフがあれば、大人も子どもも楽しめるし、こっちも、よっしゃ、やったるで!って気持ちになれますから。これは、一家に一台ですよ(笑)」

information
黒田卓也HP
https://www.universal-music.co.jp/kuroda-takuya/

「フライ・ムーン・ダイ・スーン」
世界をゴールドに染め上げるサムライ・トランペッターの最新アルバム。
ビートと生演奏が絶妙に融合した、圧倒的グルーヴ&メロディ。
ダイハツ トールCMソング「ドゥ・ノー・ホワイ」収録。

Youtube

MORE
© 2022 Wican